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はじめての
テリアブル・
ライフ
1月
そしてジャック・ラッセルにたどりついたのだの巻
2月
ひとりで飛行機に乗ってきたのだの巻
3月
超高速パピー、
ダリ号発進!の巻
4月
危険なまでにフレンドリーの巻
5月
あっぱれ!脱出王の巻
6月
日々是学習!?ダリの幼稚園ライフの巻
7月
ブリブリ・テリアになっちゃった!の巻
8月
目を離したがウンのツキの巻
9月
フーリガン・プチあらわる!の巻
10月
この世は巨大なスタジアムの巻
11月
オトナになんかなるもんか!の巻
12月
あなたも冒険してみます?の巻

この世は巨大なスタジアムの巻

〜2002年10月〜
日々騒動を巻き起こし続けながらも、
はや生後10カ月を迎えたジャック・ラッセル・テリアのダリ。
ワールドカップでその本能に火がついてしまったのだろうか、
またぞろボールにまつわる
イエローカードものの事件が起きてしまった!
ビーチで鬼ごっこ事件

 前号で報告したように、ダリはワールドカップ中継を彼なりに楽しんでいた。声援だか悪態だかを大音量で飛ばすだけでなく、テレビ画面のボールにかじりついて熱中することもしばしば。つまり、いつの間にかダリはボール大好き犬…というより掟破りのボールハンターとなっていたのだ。しかしどういうわけか、そのボールへの執着心に家族の誰も気づかなかったのである。6月のある日までは。
 その日、東京近郊のリゾート地で休暇を過ごしていた父と母は、ふと、ダリを海に連れて行ってやろうと思いついた。ちなみに、以前ダリに初めて海を見せたときは、波の動きが恐かったのか、喜ぶどころか固まってしまったという。ダリは海が苦手だったのだ。
 このときも、とあるビーチに降り立ったダリは、いつものハイパーぶりはどこへやら、おずおずと立ちすくんで妙にしおらしかったらしい。だから父もちょっと油断したのだろう。突然あらぬ方向へ走り出したダリを止めるすべはなかった。ダリの目指したもの…それは海とは正反対の岸壁を相手に、ひとりキャッチボールを楽しんでいた青年…というか彼のボールだったのだ。
 慌てた父は、「追えば逃げる」の基本原理も忘れ果て、「ダリ! ダリ!」と必死で追いかけた。もちろん70代の父にジャック・ラッセルの子犬が捕まるわけもなく(陸上選手にだって無理だろうが)、さらにマズイことに、父の声に振り向いた青年は、突進してくるダリを見て「ギャッ!」と叫ぶなり、ボールもグローブも放り出して脱兎のごとく逃げ出してしまったのだ。
 こうなるとダリの標的はもはやボールではなく、もっと大きくてイキのいい獲物…よほどの犬嫌いとおぼしきこの哀れな青年である。一方ダリは、思いがけなく始まった鬼ごっこに喜ぶ、喜ぶ! 逃げまどう青年、狂喜して追うダリ、それをまた必死に追う父。青年は、かろうじて湾岸道路へ続く石段を登って難(?)を逃れ、ダリもそこで御用となった。
 その日は体調が悪くて車の中で休んでいた母は、まだ人影まばらな6月のビーチを舞台にしたこの奇妙なレースを「ちょっとした見ものだったな〜」などとのんきに語っていたが…。私はなんだかいや〜な予感がした。
 アカの他人の「ひとりキャッチボール」にだって無理やり参加したい…ダリがそれほどのボール好きだったとは!! この事件を教訓に、家族全員、肝に命じておくべきだったのである。

2枚目のイエローカード?

 予感適中。次の事件が起こったのは、それからわずか数日後のことだった。
 その日は、以前(本誌7月号)で紹介した都内某所のドッグラン風広場へ、またぞろ両親とダリで出かけたという。ダリはいつもここで、全速力で走り回って遊ぶのだが、人間用の遊び場とはきちんとフェンスで仕切られているおかげで、飼い主は安心してその楽しげな様子を眺めていられる…いられるはずなのだが…。
 しばし走り回ったあげく、午後も遅くなるに連れ、だんだん増えてくる大型犬に後ろ髪を引かれつつも(ジャック・ラッセルは自分を50Lの犬だと見なしているので、この時期のダリは、もうラブくらいの大型犬としか遊ばなくなっていた)、彼らは帰途についた。子どもたちでにぎわう人間エリアを通り抜けて、公園脇に留めた車へ向かったのだが…。
 母いわく「あのときダリはもう中学生グループに目をつけていたのよ」。
 いざドライブ用のケージに入れようとすると、この日に限って珍しくグズッたという。そこでしかたなく無理に入れようとしたとき、何のはずみかリードが外れてしまったのだ。
 もちろん、70代の両親が「あっ」と思う間さえない。一瞬の間に身を翻したダリは、再び公園の入り口へ姿を消してしまった。で、今度は母が、またもや「追えば逃げる」の法則を無視して、「ダリ〜ッ!ダリ〜ッ!」と叫びつつ、ヨタヨタと追いかけたのである。母の老眼がかろうじてとらえたのは、公園中央の築山を飛ぶように駆け登って行く、ちっちゃな白い影だったという。
 犬の行動原理どころか自分の年齢さえ忘れ果てた母が、夢中で後を追い、頂上にたどり着いたときは、もちろん影も形もありゃしない。バクバクの心臓とかすんだ目であたりを見回してもダリのダの字もいるはずがない。
「どうしよう…ダリがいなくなった!」。築山のてっぺんで呆然と立ちつくした母は、心の中でベソをかいたという。
 しかし、下の方で父が指差す方向を見ると…、ダリはちゃっかり中学生グループに混じって、サッカーに興じているではないか! 築山からよろめき下りた母には、もはや理性のかけらも残っていなかったのだろう。凝りもせず父と二人がかりで捕獲にかかったというのである。万に一つも捕まるはずのないことくらい、本誌の読者なら、いやうちの両親以外、世界中の誰にでも、わかるはずなのだが…。
 両親が中学生グループに近づけば、すかさず小学生のキャッチボール・チームに移籍して、ピョンピョン跳ね回るダリ。それでも追いかけ続けた彼らが疲れ果てたとき、余裕シャクシャクで水飲み場にやってきたダリの首輪を、偶然そこにいた女性がひょいと捕まえてくれたおかげで、ようやくゲームオーバーとなった。
 「こんなに心配したのは初めてだった」と、後に母は日記に記している。が、しかし、私が心配なのは、虎視眈々とボールを狙うダリにまるで気づかない上に、勝つはずのない鬼ごっこにまんまと引きずり込まれてしまう両親の方である。
 この世は巨大なスタジアム。キャッチボールにサッカーに、スリル満点の鬼ごっこ…あらゆるゲームがハイパーパピーの登場を待っている、大盛り上がりの競技場なのさ! この件で、ダリはそんな確信をますます強めてしまったような気がするのである。